GroupMのAI戦略:革命か、進化か?Adrien Lepageが語る
- 出版物
- 2025-02-10
(2025年2月10日-フランス)
人工知能 (AI) は現在、あらゆる分野で強い存在感を放っており、その影響力を無視することは難しい。しかし、実際の手法として、日々のマーケティング活動にどのようにAIを組み込めばよいのだろうか。その利点は何か、またリスクはどこにあるのだろうか。これらの疑問を解決するため、Choreographの共同マネージングディレクターであるAdrien Lepageに話を聞いた。同氏は、GroupMがAI時代にどのように適応しているのかを述べるとともに、AIの導入第一歩について説明した。
AIが注目される理由
GroupM: Adrienさん、現在、AIはあらゆる業界で注目を集めていますが、ビジネスにおいてこれほどまで重要視されるのは何故でしょうか?
Adrien Lepage: AIは、マーケティング、メディア、コミュニケーションのあり方を根本的に変革する技術です。この影響は、戦略立案やコンサルティングに留まらず、会社内の業務活動全般にも反映されています。
AIを活用することで、効率的な購買プロセスの実現や、プラットフォーム間でのオーディエンスエンゲージメントが可能になり、業務プロセス全体の改善が加速され、会議設定やアポイント調整等だけでなく、働き方そのものも変革されます。
GroupMでは、業界全体への影響とオフィス業務への影響の両方を真剣に捉え、社員がAI技術を習得し活用できるようにすることが不可欠だと考えています。
AIを適切に活用することで、業務の効率化とサービス品質の向上が期待される。特に、データ処理やレポート作成といった定型業務を自動化することで、より付加価値の高い戦略的な業務に集中することが可能になる
AIがもたらす変化:クライアントへの影響
GroupM: GroupMはAIへの投資を積極的に進めていますが、具体的にクライアント支援のあり方はどのように変化しましたか?
Adrien Lepage: 私たちの役割は、常に変化し続ける環境の中でクライアントを適切にサポートすることです。AIの活用により、業務の効率化とサービスの質の向上が可能になります。例えば、データ処理やレポート作成の自動化により、戦略立案やコンサルティングといった付加価値の高い業務により多くの時間を割くことが可能になります。
WPPは過去3年間で2億ドルをAI関連に投資しており、その一環としてWPP Openという革新的なAI活用プラットフォームを開発しました。本プラットフォームは、私たちの業務に最適化された大規模マーケティングモデルで、クリエイティブ、PR、メディアの各エージェンシーにおけるクライアントとの連携のあり方を根本から変革するものです。社内で設計されたこのシステムは、最新のイノベーションをリアルタイムで統合し、従業員やクライアントからのフィードバックを反映しながら継続的に進化を遂げています。
WPP Openは、ビッグデータを活用し、オーディエンスの追跡・精査・展開を可能にする包括的なコラボレーションプラットフォームです。その名の通り、オープンな設計を特徴とし、Google、The Trade Desk、Salesforce、OpenAI、Amazonなどのテクノロジーパートナーとの連携を可能にしています。これにより、データの収集・処理の効率化を図るとともに、チーム、クライアント、メディア、テクノロジーパートナー間の協業を強化します。
AI時代に向けた社員教育の取り組み
GroupM:このような変革に対応するため、GroupMではどのような教育プログラムを導入し、社員のスキル向上を図っているのでしょうか?
Adrien Lepage: GroupMでは、数年前からAIに関するトレーニングを実施しており、一部の経営陣はオックスフォード大学の専門課程を修了しています。また、SEOチームを中心に、生成AIに特化したチームが4〜5年前から新入社員の育成に取り組んでいます。これはChatGPTの登場以前から行っていた取り組みです。
さらに、生成AIの急成長を受け、私たちはAIアカデミーを設立しました。このプログラムは、職種に関係なく全従業員から1,000名を対象に、13のモジュールで構成された5ヶ月間の必須プログラムであり、Virginie Bleuvenを中心に、私たちの人事チームによって導入開始されました。
AIは革命か、それとも進化か?
GroupM:メディア業界におけるAIの進展は、「革命」と捉えるべきでしょうか?それとも「進化」の延長線上にあるのでしょうか?
Adrien Lepage: 市場全体の視点から見れば、「革命」です。このAIの波は非常に大きく、急速に進化する技術に適応しなければ競争力を維持するのは難しくなるでしょう。しかし、GroupMにとっては「進化」といえます。なぜなら、私たちはこの変革を数年前からこの変革を予測し、計画的に準備を進めてきたからです。
AIの利用がもたらす課題とGroupMの取り組み
GroupM:AIの導入には、特にセキュリティや倫理面での課題が指摘されています。GroupMでは、こうしたリスクにどのように対応しているのでしょうか?
Adrien Lepage: AIアカデミーの第2モジュールでは、私たちの法務ディレクターがAIの法的・倫理的枠組みに関する講義を担当しています。AIは非常に強力なツールですが、アーティストやクリエイター、顧客の知的財産を守るために、個人としても組織としても慎重な対応が求められます。創造性と革新性を追求しつつ、規制とのバランスを適切に取ることは容易ではありませんが、私たちは常識と責任感を持って取り組んでいます。また、WPP Openはセキュリティ面でも厳格な基準を採用し、データ保護の強化に努めています。
AIは雇用への脅威となるのか?
GroupM:AIの進化が雇用に与える影響については、しばしば懸念が指摘されます。この点について、どのように考えていますか?
Adrien Lepage: 私たち(GroupM France)のCEOであるAlexandra Chabanneも指摘している通り、「仕事を奪うのはAIそのものではなく、AIに精通した人々である可能性が高い」というのが現実です。AIは破壊的イノベーションであり、不安を引き起こすのは当然ですが、進歩を受け入れ、それを最大限活用すべきだと私は考えます。AIは私たちをより迅速かつ効率的にしてくれるツールです。しかし、それに頼るだけでなく、好奇心を持ち、学び続け、同僚と意見交換することが重要です。AIは反復的で負担の大きい業務を削減し、より興味深い職務を作り出します。
それでもなお、人間の役割は不可欠であり、エージェンシーの役割は変わりません。それは、クライアントがビジネス目標を達成できるようサポートすることです。ただし、その方法は進化し、今後はAIとデータの習熟がますます重要になる新しい環境で、広告主をサポートする形へと変わっていくでしょう。
AIは、データの精緻化および各広告主に最適化されたパーソナライズドモデルの作成方法に革新をもたらす。各クライアントの特定のニーズに対応するAIやAIエージェントを開発することで、これまでにない精度と詳細度を実現できる
AIがマーケティングパフォーマンスを向上させる具体例
GroupM: AIはどのようにして広告主のマーケティングパフォーマンスを向上させることができますか?具体的な例を教えてください。
Adrien Lepage: AIはすでにプログラマティック広告やソーシャルプラットフォームで活用されています。私たちの入札システムは何年も前から機械学習によって最適化されており、それでも更に、AIはデータを洗練し続け、各広告主に合わせたパーソナライズされたモデルを作成する方法を根本的に変えています。
例えば、保険会社と共済会社のビジネスは一見似ているように見えますが、そのアプローチは異なります。今では、その微細な違いを広告主ごとに、状況や期間に合わせて処理できるようになっています。
AI導入を始めたい企業へのアドバイス
GroupM: AIを始めたいけれど、どこから手をつければいいかわからない広告主にアドバイスをお願いします。
Adrien Lepage: まず、組織内で AIに興味と情熱を持ち、独学でその利点を発見した好奇心旺盛な社員を見つけることです。彼らはアンバサダーやトレーナーとして活躍できる可能性があります。そして、専門機関や私たちのチームによるトレーニングを提供し、専門家と初心者の間にギャップが生じないようにすることが重要です。
企業にとって最悪なのは、二極化した組織になることだ。一方では高度に進んだ社員が特定の方法で業務を遂行し、もう一方では取り残された人々が次々とこの高速列車に乗り遅れてしまう状況です。AIを習得するには時間と実践が必要です。そのためにも、試行錯誤を恐れず、実際にAIを活用しながら学ぶことが重要です。
AIは広告主にとって大きな機会です。GroupMは、WPP OpenプラットフォームとAIアカデミー研修プログラムを通じて、この変革を支援しています。詳しく知りたい方は、ぜひお問い合わせください。
IA chez GroupM : révolution ou évolution ? Adrien Lepage nous éclaireより